Introducing MIROS — A New Era of High-End Wellness

VOL2.ディープテックで生まれる素材革命

ディープテックで生まれる素材革命

Cambrium(カンブリアム)という研究集団


「ディープテック」という言葉を聞いたことがあるだろうか?

経済産業省の定義によると、社会課題を解決し、私たちの生活や社会に大きなインパクトを与える革新的な技術のことを指している。

そして今、この技術が美容業界にも革新をもたらそうとしている。その先駆的な存在のひとつが、ドイツ・ベルリンに拠点を置くバイオテクノロジー企業Cambrium(カンブリアム)だ。EUやベルリン投資銀行からも研究支援を受けるなど、次世代の高機能バイオ素材やタンパク質原料の開発を行う同社の技術は、世界的に注目を集めている。

日本発ハイエンド・ウェルネスブランドとして今春誕生したMIROS(ミロス)とパートナーシップを結ぶカンブリアムが取り組んでいるのは、素材をまったく新しい方法で生み出すこと。自然界から採取するのでもなく、既存の素材を組み合わせるのでもない。分子そのものを設計し、製造するという革新的なアプローチである。

2026年春、MIROSのブランドローンチイベントのため来日していた、カンブリアムの共同創業者であり最高科学責任者、チャーリー・コットン博士に話を聞いた。

 

素材は、再構築できるのか

カンブリアムとは、一体どのような会社なのだろうか。

「私たちが目指しているのは、この世界を構成している素材そのものを再解釈することです。自然界には無数の分子が存在していますが、その構造や働きを完全に理解しているとはいえません。まずそれを科学的に理解すること。そして、その理解をもとに新しい分子を設計すること。それが私たちの出発点です。」

穏やかな語り口のコットン博士はまだ若く、どこか研究者らしからぬ華やかな雰囲気も併せ持っている。

素材開発と聞くと、新しい原料を見つけることを思い浮かべるかもしれない。実際、多くの素材開発は、自然界に存在するものを採取し、それを加工して利用してきた。

だが、カンブリアムのアプローチは根本的に異なる。

素材を「発見する」のではなく、分子レベルで理解し、設計する。それが可能であるのなら、自然界の素材を「再構築する」こともできるのではないか。この発想が、カンブリアムの研究の起点にある。

 

分子の可能性は、どこまで広がるのか

研究において、AIはどのような役割を担っているのだろうか。

「分子のもつ可能性は無限大で、そのすべてを把握するのは簡単なことではありません。AIは、その可能性を探索するためのツールとして使われています」

分子構造には膨大なバリエーションが存在する。ひとつのテーマでも、理論上考えられる構造は数千、あるいはそれ以上に及ぶこともあるという。実際、ある研究では一万以上の分子構造が検討された。当然ながら、それらをすべて実験することはできない。

AIはその可能性を整理し、探索の道筋を立てる。その上で研究者が、実験の実現性や製造の観点を踏まえながら、現実的な選択肢へと絞り込む。

「AIが研究者に代わるわけではありません。むしろ、研究者が探索できる範囲を広げていると考える方が近いと思います」

その言葉に、次世代のバイオ素材開発におけるAIと研究者の関係性がよく現れている。

 

研究と実装の距離

カンブリアムの話で印象的なのは、研究と実用化の間にほとんど距離がないことだ。

同社では、エンジニア、研究者、ビジネスチームが同時に議論しながら開発を進めていく。市場のニーズを捉え、それをどのような分子設計で解決できるかを考え、同時に実用化できるのかを検討する。これらのプロセスを同時並行で進めていく。

「分子設計と製造は切り離されたものではありません。実際に作れるかどうかまで見据えることが、研究には不可欠です」

研究の初期段階から「実用化の可能性」を織り込む。そして、AIで分子を解析・設計し、精密発酵で製造する。その結果、画期的な素材の開発を短期間で実現できる。インタビューでは、顧客の相談を受けてから、わずか9日で最初の設計案を提示することもあると語られた。

また、このアプローチは従来の素材開発と比べ、水資源やエネルギー、土地利用を大幅に削減できる。研究から製造まで一貫したプロセスが、革新的な素材開発と効率性、持続性を同時に実現している。

 

「問い」から始まる素材革新

カンブリアムの研究はつねに、解くべき「問い」から始まる。

何を解決したいのか?そのために必要な分子構造は何か?どのような製造プロセスであれば実現できるか?そこから逆算して設計を進めていく。

コットン博士はこのアプローチを「”問い”から始める研究」と表現した。トレンドを追うのではなく、科学的に意味のある「解決すべき問題」を起点として研究を進めるという考え方だ。

その成果のひとつが、MIROSのスキンケア製品に採用されているマイクロ分子コラーゲン、PIKIÄ®である。従来の動物由来コラーゲンとは異なり、ヒト皮膚コラーゲン(タイプI)と同じアミノ酸配列を持つヴィーガン素材として開発された。高い肌なじみの良さと、環境に配慮した調達を同時に実現している。

 

ディープテックが描く、素材の新時代

カンブリアムの取り組みは、単なる素材開発にとどまらない。

素材を「どう生みだすか」というプロセスそのものを変えようとしている。自然界を観察し、分子の仕組みを読み解く。そこから必要な構造を設計し、精密発酵などのバイオテクノロジーによって実際の素材へと落とし込んでいく。

「ディープテック」が目指しているのは、科学と実用化の間にある距離を縮めることなのかもしれない。

PIKIÄ®は、そうした成果のひとつだ。そして、その水面下では素材開発のあり方そのものがそっと書き換えられつつある。

私たちの生活は、食品や化粧品、医薬品、衣服、建築など、数えきれないほどの素材に支えられている。もしそれらの成分を、分子レベルから設計できるとしたら...?

カンブリアムという会社を知ることは、素材開発の未来への扉を開くことになるのかもしれない。

 

PIKIÄ®が配合されたMIROSのスキンケアを体験する

ドイツ・ベルリンを拠点とするバイオテクノロジー企業Cambrium(カンブリアム)公式サイト